PCメモ

Excelを中心とした業務改善の記録

振込手数料を対価の返還として扱った場合の影響額

インボイス制度の緩和措置「少額な返還インボイスの交付義務免除」について。

当初は入金時に差し引かれる振込手数料に係る消費税を、仮払消費税として処理し仕入税額控除を行う為には「返還インボイス」が必要とされていた。

しかし、緩和措置である「少額な返還インボイスの交付義務免除」により、返還インボイス不要で処理できるようになった。

 

少額な返還インボイスの交付義務免除とは

インボイス発行事業者が国内で行った課税資産の譲渡等につき、返品や値引き、割戻しなどの売上げに係る対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、その金額が税込1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されます(新消法57の4③、新消令70の9③二)。
 例えば、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合には、通常、当該振込手数料相当額は1万円未満となりますので、当該売上値引きに係る返還インボイスの交付義務が免除されます。
引用:国税庁 少額な返還インボイスの交付義務免除の概要

つまり、今まで通り「仮払消費税の発生」として処理する場合はインボイスが必要になるが、振込手数料を売上値引きとして処理すればインボイスは不要になるということ。

先方に手数料分のインボイスの発行を依頼することは手間であるし、おそらくどこの経理もこの対応は避けたいはず。となれば、どこの会社も振込手数料を「対価の返還」として処理するはず。

しかし、仮にインボイスの発行を要求された場合は制度上は発行の義務があり断ることはできない。

もしかしたら、緩和措置を使うと事務工数が減る代わりに納税金額が増加してしまうのではないか。と思い影響額を計算してみる。 

売手が負担する振込手数料とは

そもそも本件で問題となっている振込手数料とは。

以下の取引があった場合の差額880円のこと。

4月 A社(当社)がB社(取引先)へ110,000円請求を行った。
5月 B社からの109,120円の入金を確認した。差額880円が発生している。

仕訳にすると以下の通り

【4月】
A社 売掛金:110,000 / 売上:100,000 仮受消費税:10,000
B社 仕入:100,000 仮払消費税:10,000 / 買掛金:110,000

【5月】
A社 現預金:109,120 手数料:800 仮払消費税:80 / 売掛金:110,000
B社 買掛金:110,000 / 現預金:110,000

前提条件

税の計算方法は個別対応方式を採用している。

以下の取引のみが発生している。

【売上】
・課税売上:100,000 仮受消費税:10,000
・非課税売上:8,000 

仕入
・課税仕入:50,000 仮払消費税:5,000
・非のみ仕入:2,000 仮払消費税:200
・共通仕入:5,000 仮払消費税:500
・共通仕入(振込手数料):800 仮払消費税:80

課税売上割合=100,000/(100,000+8,000)=0.926925....≒0.92

緩和措置を適用しなかった場合

振込手数料に係る消費税は通常通り「仮払消費税」として処理をする。

仮受消費税:10,000
仮払消費税:5,000+{(500+80)×0.92}≒5,533
差引:10,000-5,533=4,467

緩和措置を適用した場合

振込手数料に係る消費税を「対価の返還」として処理をする。

仮受消費税:10,000-80=9,920
仮払消費税:5,000+(500×0.92)=5,460
差引:9,920-5,460=4,460

まとめ

振込手数料に係る消費税を「対価の返還」として処理した方が、7円納税額減少した。
(4,467-4,460=7)

会社の負担が減少し、事務工数も削減できるならこれを使わない理由はない。

ただ、今まで振込手数料(経費)として処理していた項目が、対価の返還(売上のマイナス)として処理してしまうと、会社の決算書に影響してしまう。

国税庁のホームページを見ると、以下の説明があり消費税計算上のみ対価の返還として扱うことができるようになる為、特に問題はなさそうである。

なお、売手が負担する振込手数料相当額について、経理処理を支払手数料としつつ、消費税法上、売上げに係る対価の返還等とすることもできますが、この場合であっても、売手が買手に対して売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率に従うことから、適用税率に応じた区分のほか、帳簿に売上げに係る対価の返還等に係る事項を記載する必要があります。
引用:国税庁 少額な返還インボイスの交付義務免除の概要

それでも振込手数料のインボイスを発行して欲しいと要求してくる取引先がでてきた時にすぐ発行できるよう、準備しておいた方がよさそう。